きっかけは、手が疲れたことでした。
長い時間の作業でいちばん先に疲れるのは、頭ではなく手でした。同じ文章を何度も打ち、同じ場所から同じファイルを探し、同じ画面を何度も撮る。1回は数秒でも、1日に何百回とくり返せば、それは確実に体に残ります。
クリップボード履歴のツールは、もともと使っていました。Windows の Win+V も、定番の Clibor も、よくできた道具です。今でも良いソフトだと思っています。それでも、自分の使い方には足りないところがありました。
履歴が思ったより早くいっぱいになること。スクリーンショットが履歴に残らない、あるいはすぐ流れてしまうこと。そしてプレビューが小さくて、どれがどれだか分からないこと。どれも致命的ではありません。ただ、1日に何百回も触る道具では、その小さなつまずきが積み重なります。
だから、足りなかったところだけを自分で足すことにしました。テキストの履歴は1万件まで持てるようにして、設定を変えればさらに増やせます。撮ったスクリーンショットは履歴に並び、フォルダにも保存されるので後から見返せます。一覧の上にマウスを置いて少し待つと、右隣に大きく開きます——小さくて見分けがつかない、をなくすためです。
作りはじめてから、うまくいったことばかりではありません。一覧が真っ白になる不具合には、長いあいだ悩まされました。原因だと思ったものを直しては外し、それを何度もくり返しました。世界中の似たツールのソースコードを実際に読み、9つの仮説を1つずつ実測でつぶして、ようやく引き金にたどり着いたのは、つい先日のことです。
この道具は、Win+V や Clibor を置きかえるために作ったものではありません。それらが切りひらいた「コピーしたものは消えない」という当たり前の上に、自分の作業で足りなかったぶんを重ねただけです。先に作ってくれた人たちがいなければ、そもそも何が足りないのかも分からなかったはずです。
目指しているのは、打つ回数が減って、手が少し楽になること。それだけです。今日も直し続けています。